デジタルツイン(digital twin,またはデジタルツイン・パラダイム;digital twin paradigm)とは,現実世界の物理的なシステムやプロセスを,仮想空間上にリアルタイムに再現するという,長期的なビジョンを指す1.対象を現実世界と仮想空間の両方に「双子(twin)」のように存在させることから,この名称が付けられている.

たとえば,長期間使用されるシステムやプロセスのテストにおいては,現実における再現が困難な過酷な状況を想定する必要がある.デジタルツインはこうした状況を仮想空間上でリアルタイムに再現し,それにもとづいて現実世界での対応策を検討,決定するための枠組みである.

デジタルツインという概念はもともと2010年ごろからNASAにより,宇宙船や航空機の開発,運用を目的に提唱されたものであり,現在もその実現に向けたさまざまな技術開発が継続的に進められている.近年では,IoT人工知能技術の普及を背景に,デジタルツインは主に工場の生産プロセスの最適化やリスク検出などの分野で,実用的な技術として注目を集めている.

Footnotes

  1. E. Glaessgen and D. Stargel, “The Digital Twin Paradigm for Future NASA and U.S. Air Force Vehicles, 53rd AIAA/ASME/ASCE/AHS/ASC Structures,” Structural Dynamics and Materials Conference: Special Session on the Digital Twin, Jun. 2012